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冷却ファンの温度制御

機械にケースファンを取り付けることにしましたが,騒音が気になります. そこで,機械の内部が涼しいときは低速回転にする回路を組み,内蔵しました. 設定温度以下では低速回転,設定温度以上では全速回転となります. 抵抗制御ではないので,電力の無駄は小さくなっています.

  1. 回路図
  2. 実物の写真
  3. 説明
    1. ファン制御部
    2. 温度検出部
    3. FET 制御部
    4. その他
    5. 調整
  4. 参考文献

§1 回路図

CE2 形式の回路図をダウンロード (LZH 8KB)

回路図

§2 実物の写真

§3 説明

(1) ファン制御部

ファンの電源は FET Q1 を通じて供給します. 高速回転をさせるときは Q1 を常時オンとし, 低速回転をさせるときは Q1 を高速でオンオフさせます. Q1 には,スイッチング用 Pch MOS FET で電流容量に余裕があるものならほとんどのものが使えます.
 資料がなかったので, 低速回転は Q1 を1秒間に約1,000回オンさせて行うようにしましたが, この周波数は 10kHz 以上にするべきだったようです. 周波数が低いためか,小さい音ですがモーターが「きゅいーん」と妙な音を出すので, C7 220μF で平滑させてしまいました. しかしそうすると FET オンの期間に大電流が流れてコンデンサにたくわえられ, FET オフのあいだも C7 からファンに電流が供給されてしまい, 低速回転とはならなくなってしまいます. ここでは R8 10Ω を入れてごまかしました. なお,動作具合を調べるときのため, C7 は JP1 で回路から切り離せるようにしてあります.
 C7 は手持ちの部品で容量が大きめのものを選びました. R8 は耐電力が 1/4W のものでは不足します. D6 はファンがつくる逆起電力をショートし, 回路のほかの部分に悪影響を与えないようにします. C8 はファンの作る比較的高周波のノイズを除去します.

(2) 温度検出部

温度センサは, 手持ちがなかったのでふつうのダイオードで代用しました(D3〜D5). ダイオードの順方向電圧は温度1℃上昇につき約 2mV 減少するので, 3本直列では -6mV/℃ ということになります. ダイオードに流す電流が変動するとこの関係が少々狂うので, U1 TL431 で正確な 2.5V を作り,センサの電源としています. C2 は温度センサからのコードがひろう高周波ノイズをアースします.
 U1 TL431 には,規格によれば最低 1mA は電流を流さなければなりません. この回路で規格を満たすことを調べてみましょう. まず,D3〜D5 の順方向電圧の合計は 2.0V 弱なので, R4 には 0.5V 強の電圧がかかり, したがって R4 には 0.2mA ほど流れることになります (コンパレータから流れ込んでくる電流は無視できます). R2,VR2,R3 の合計は 78kΩ で, これに 2.5V がかかっていますから,ここには 0.032mA が流れます. R5 には (12−2.5)[V] ÷ 5.6[kΩ] = 1.70[mA] が流れるので, U1 に流れる電流は 1.5mA 弱となっていることがわかります.
 それから,TL431 は出力につながる容量によっては発振してしまいます. この回路では TL431 につながる容量分はかなり小さくなっているので, 問題ないはずです.また,TL431 も温度特性を持っていますが, 規格表によれば気温15〜35℃ の範囲での電圧の変動は 10mV 未満のようですから, この回路の動作には大きな影響は出ないでしょう.
 U3 LM311 は高速コンパレータで, 温度設定を行う VR2 からの電圧とセンサからの電圧とを比較しています. センサ電圧のほうが高いとき, つまり温度が低いときは7番ピンはオープン状態となっています. センサの温度が高くなると,7番ピンがアースされます. ここに高速なコンパレータを使う必然性はありませんが, 手持ちの部品の関係でこうなりました.
 コンパレータは,ちょっと使い方を間違えると簡単に発振してしまいます. オシロスコープで見てみると,やはり設定温度付近で 軽く発振することがあるようです. 図の回路に変更したところほぼ大丈夫でした. 入力に変なコンデンサ C3,C4 がぶらさがっているのは回路を変更した名残で, はずすのが面倒なのでそのままになっています. もっと安定した動作を実現するには,4回路オペアンプを使い, センサと VR2 からの2つの電圧をそれぞれオペアンプ1個ずつで低インピーダンスに変換し, オペアンプもう1つをヒステリシスを持つ比較回路とすればよいでしょう.

(3) FET 制御部

U2a〜U2c は約1kHz の発振回路です. U2a 2番ピン出力が0のとき,FET Q1 がオンになります. VR1 でオン時間とオフ時間の割合を決めます.
 設定温度以上になると,U2b 5番ピンが U3 LM311 によりアースされ0となるので, 2番ピン出力も0となり,Q1 が常時オンになります.

(4) その他

C5,C6,L1,C9 はノイズを除去します. オシロスコープで見てみたところ, この基板内で発生するノイズはコンピュータの電源からやってくるノイズより 小さいようなので,L1,C9 はよけいだったかもしれません. このあたりの定数はおおざっぱで構いません. C5,C7 は 16V 以上の電解コンデンサを使います.  C-MOS IC は入力が0と1の中間のとき電流を食うので, 使わない入力端子は0か1に固定することが必要です.

(5) 調整

温度センサをはずすと低速回転モードになるので, ファンがうるさくならない範囲内で最高の回転数になるよう VR1 を設定します. 回転数を低くしすぎると,起動時ファンが回らない恐れがあります.
 次に温度センサを取りつけ,センサを指で温めてみます. VR2 を低速回転と高速回転が切り替わる付近に設定します. センサを指でしばらく温めると高速回転になり, 指を離してまたしばらくすると低速回転にもどることを確認してください.

§4 参考文献

◇ 定本 発振回路の設計と応用,稲葉保著,CQ 出版社,1993.
− 発振回路,ダイオードの温度特性など
◇ MOTOROLA LINEAR AND INTERFACE INTEGRATED CIRCUITS 第2版,MOTOROLA,CQ 出版扱い,1990.
− TL431,LM311
◇ 標準 CMOS ロジックデータブック(和文),日本モトローラ,CQ 出版扱い,1990.
− MC14049UB
◇ TL431 データシート,テキサス インスツルメンツ.
◇ IR HEX FET データシート,IR.
− IRFR9020

TOP  Email to Kunihiko Nakano(c) FEB 9, 2005