G4 YKT型CW-APFの製作

A report of a wonderful CW audio filter designed by G4 YKT, ringing-free. Much suitable for serious DXing and contesting. I added a circuit for average-noise-smoothing designed by JM 1 M CF. Pictures and circuits.

製作例: ノイズスムーザ3組+G4YKT4段1組

これから読みやすくする予定です.

HAM Journal No.70にJA0 PX により紹介された位相推移型CW用オーディオ・フィルターについて,製作上の注意点,および使用記をまとめます.動作原理などについてはその記事を参照してください.

回路は,記事の第10図に従えばいいのですが,オペアンプの名前が書かれていません.741タイプが使われたようですが, ここではNJM4580D(秋月で安い)を使いました.これは4558を低雑音オーディオ用に特性を改良したもの,4558は741をオフセット調整不要にし,低雑音にしたものが2個1パッケージに入っているものです.雑音を減らす装置ですから,余計な雑音を出させないことは重要です.

回路図では4段フィルタを3組使用していますが,実際使用してみると1段でも相当な効果があり,2組目を使う場面もそれほどありません.したがって,3組目は不要です.

オーディオアンプは変わった回路が使われています.ここは普通のオーディオアンプのICを使うのが手軽ですが,よく使われるLM380やLM386はヘッドホンで聞くとかなり雑音が多く, よくありません.秋月の1〜2W程度のアンプのキットを使うといいでしょう.

それから,フィルタの組数を増やすと,雑音が減って目的の微弱な信号だけが聞こえる感じになります.したがって聴感上の音量が小さくなります.これの対策として,切り替えスイッチの部分で0組と1組に音量をそろえるための半固定VRを入れました.切り替えスイッチは,信頼できるものを使ってください.レベル管理を間違わなければ,CMOSのアナログスイッチで切り替えると良いでしょう(ON抵抗が信号レベルによって変わるので,高レベルの信号を通したり,ローインピーダンスで受けたりすると音が歪む).私はノイズスムーサをつくるときアナログスイッチを使ってよい結果を得ました.

調整のしかたを記します.

  1. 800Hzのトーン(無線機をCWモードで電鍵を使えばよい)を入れ,スイッチを各組に切り替えて音が出ることを確かめる.
  2. 約600Hzのトーンを入力し,スイッチを1組に切り替え,音量が最少になるように1組目の半固定VRをあわせる. 600Hzの音源は,無線機のマーカースイッチを入れて, 例えば28.000.6LSBを受信すれば良い.VRで最少点を見つけたら,無線機のダイアルを微調整して最少点を見つける.これを繰り返すと,ボリュームを相当あげても約600Hzの音が漏れないようにできる.このあと無線機のダイアルはまわさないこと.
  3. 調整のコツがわかったら,1組目の調整をわざとずらして,600Hzの音が相当漏れるようにして,スイッチを2組目に切り替え,2組目のVRを調整する.
  4. 2段目が調整できたら,スイッチを1組目に切り替えて,1組目の調整をやり直す.
  5. 微弱な信号を受信する.2段目と比べて若干音が小さく感じる程度に1段目の音量設定半固定VRを調整する.次に1段目に比べて0段での音量を同様に設定する.つまり,段数を増やすと目的信号の音量が少しずつあがるようにする.この辺は実際に使用してみて音量差を使いやすいように設定する.

ここで,重大な注意をします.最少点を見つけるとき,無線機やフィルタのボリュームを相当上げることになると思います.そのまま調整をずらしたり,スイッチを切り替えるととんでもなく大きな音が出ます.また,調整VRを大きくずらすと発振が起こります.耳をおかしくしないよう,十分注意してください.

ハムや高周波の混入をさけるため,配線は次の点に注意してください.

  1. 入力端子は金属製のRCAピンジャックを使う.ここで入力のアース側がケースにつながる.ほかの端子はケースとつながらないようにしないとハムが乗る.
  2. そのため,電源入力は絶縁型のDCアダプタ用ジャック,ヘドホン出力は絶縁モールド型を使うこと.
  3. 高周波がケース内部に侵入しないように,入出力の各端子は最短距離でケースとセラミックコンデンサでつなぐ.
  4. 基板への電源の配線は,プラスとマイナスをよじることで,磁力線の発生を止める.1・2を守れば,2本の線に流れる電流は等しいことになる.
  5. 入力になる配線はインピーダンスが高く,すぐノイズを拾う.基板への信号入力,ボリュームからの入力はシールド線をつなぐ.
  6. 基板内の470uFに電源をつなぐ.そして回路の各ブロックへの電源の配線は,ブロックごとにここから配線する. ICごとに0.1uFのセラミックコンデンサを電源につなぐ.6Vの線はブロックに一つコンデンサがあれば大丈夫.
  7. ボリュームのケースはできればシールド線の網線とつなぐ.

参考図では,ヘドホン端子からの高周波の流入を,コンデンサとともに音量制限用の100オームの抵抗でも押さえています. この抵抗を省略するときは,コンデンサをもう少し大きくしたほうがいいのですが,場合によってはオーディオアンプが発振するので注意が必要です.また,この抵抗により,モノラルのヘドホンも直接接続できるようになっています.さらに,オーディオアンプのノイズが気になるときはコンデンサの容量を大きくして高音をカットすると聞きやすくなります.

使用感

雑音が消えます.だからボリュームを上げることができます.

1組だけ使うと, 昔の八重洲のナローフィルタ(350Hz)を使っているような感じで,狭すぎることもなく,国内コンテストでは常時入れても使えるでしょう.受信機のCWフィルタが500Hzの機械では,うるさいバンドではこれを使うと快適に運用できます.某FT-757・767のように,CWフィルタがいいかげんな機械にも効果大です.

2組使うと,ものすごく狭くなります.ダイアルはぴったりあわせなくてはなりません.相当静かになり,目的の局の音だけが聞こえてきます.今までボリュームを最高に上げて耳を痛めつつヘッドホンに両手をあてて聞いていた信号が,何もしないで同じように聞き取ることができます.ただし,最初から聞こえないものはあまり聞こえるようにはなりません.また,DXコンテストでヨーロッパを相手にしていると,微弱なのがうじゃうじゃ,それも周波数がばらばらで呼んできますが,こういうのの相手が楽にできます.

さらに弱い信号を聞くには, JM 1M CF 考案のノイズスムーサが使えます(DSPという手もあるが,クラブ局では予算がないだろう).私がすすめるのは,まずノイズスムーサで処理し,その出力をこのオーディオフィルタ1組目までで処理することです.ノイズスムーサは原理上受信機のフィルタが狭すぎると効果が減ってきます. 500Hzのフィルタを使えばいいのですが,混信が気になりますので,このフィルタを使うといいのです.実際使っていると,このフィルタも若干ながらノイズスムーサを使ったような効果もある感じです.ここまでやると,今までコールサインを5回聞いても交信できなかった局が,1回聞くごとに1文字ずつコピーできて何とか交信できる,というふうになります.

DXコンテストや,国内コンテストの50MHz以上では,スムーサの威力を体験すると,スムーサなしでは不安になるようになります.私も運用にはある程度の自信はありましたが,いままで聞こえなかったり無視してしまっていた信号の局と交信していると,何だか恥ずかしくなってきました.以前は相当もったいないことをしていたんだなと思います.こうした装置を使っても局数やマルチが大きく増えるわけではありませんが,接戦での勝敗を分ける程度には働いてくれるかもしれません.

JA7YAFにおけるオーディオフィルタの使用

国内コンテスターの間でも, DSPの使用が主流になりつつありますが,金がないクラブ局はアナログで処理して対抗しましょう.


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FEB 13, 2002